今回の不当懲戒請求に対する訴訟のやり方はおかしい

初めまして。ポパイ謙三と申します。まず私は弁護士ではなく、法律知識は殆どありません。そんな私から見ても、今回の不当懲戒請求に対する訴訟のやり方はおかしいと思っています。まず何が起こっているのか簡単に説明します。

弁護士ドットコムより

根拠のない不当な懲戒請求を大量に受けたことについて、東京都内の弁護士2人が5月16日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて、6月下旬から順次、960人の懲戒請求者を相手取り、慰謝料を求める訴訟を起こすと公表した。すでに和解が成立したケースが複数件あり、6月20日ごろまで和解を呼びかける。メールによる謝罪も受け入れているとしている。

弁護士の懲戒請求をめぐっては、あるブログが発端になって、全国レベルで大量におこなわれていることが問題になっている。このブログは、朝鮮学校への補助金交付などを求める各弁護士会の声明に反発したもの。2人の弁護士は、このブログ主の刑事責任(業務妨害罪など)を追及する方針だ。

 なお、それぞれ、損害賠償の金額は、弁護士1人あたり30万円となっており、裁判を起こす日付は6月末。6月20日ごろまでに謝罪と、それぞれ弁護士1人あたり5万円ずつ(計10万円)の和解金の支払いがあれば、和解に応じるということです。

橋下弁護士は、訴えた事自体が問題だと言っていますが、私はそうは思っていません。

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訴えた事自体はアリですが、この訴訟について問題点が3つあると思っています。 

  • 1. 損害賠償金があまりにも高すぎること

960名に対して、一人当たり30万円は、ざっくり計算すれば3億円弱になります。仮に全員が和解に応じた場合でも、5,000万円。懲戒請求は、弁護士会が受領し、綱紀委員会で審議するということですが、日弁連の判断で懲戒請求として扱わなかったと聞いています(未確認)。仮に扱われていたとしても960通同じ内容なわけですから、弁明書を一通出せば終わる話なのではないでしょうか。彼らは本当に3億円の損害を受けたのでしょうか。ド素人ならまだしも、プロの弁護士が明らかに自分が受けた損害よりも過大な賠償金を民間人に対して請求するのは、職業倫理上OKなのでしょうか。

懲戒請求の損害賠償の相場は過去の判例を見る限り、50万円から数百万円です。同一内容の懲戒請求が960通来たからといって、同一案件として弁護士会では処理されるのだと思うので、損害が960倍になるわけではないでしょう。一人に対する和解金として5万円は妥当だとしても、総額では5,000万円にのぼるとしたら、プロフェッショナルが、自らが受けた損害以上の賠償を一般人から得られる可能性の高い方法を取ったことがアウトと考えられます。 他の弁護士の先生がおっしゃるように、共同不法行為として訴訟を提起すべきであったと考えられます。

  • 2.法的根拠、具体的な損害、和解金の金額根拠が明らかにされないまま、裁判をするぞと脅して和解を提案していること

高島弁護士も述べられていますが、この懲戒請求自体は明らかに不当だと私も思いますが、誤っていても独自の政治信条に基づいた懲戒請求が事実に基づいていた場合、そもそも違法なのでしょうか。

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平成19年の判例を見ると、懲戒請求が事実上又は法律上の根拠があるか、また名誉又は信用の毀損があるかどうかがポイントのようです。彼らの懲戒請求は間違っていて法律上の根拠を欠くものだと思いますが、ツイートを理由としている以上は虚偽の事実に基づいた請求とまでは言えない気がします。(ただし佐々木弁護士に対する朝鮮学校補助金について賛成の声明を出したという点については、虚偽ということなので、そう誤解せしめる事情がない限りはアウトなのだと思います)。 

そもそも、両弁護士は具体的な損害について、十分に明らかにしていないように見えます。違法でも損害が発生していなければ民法709条の適用はないと理解していますが、合っていますでしょうか。

同じように懲戒請求をうけた札幌の猪野弁護士は実害は皆無と言い切っています。

inotoru.blog.fc2.com

そして総額最大5,000万円もの和解金の根拠もわかりません。

プロの弁護士がこういった損害賠償請求の根拠を明らかにしないで、訴訟をするぞと脅して、総額5,000万円1人5万円の和解に持ち込もうとしている。裁判をして弁護士をつければ、最低60万はかかるので、おかしいと思っても泣き寝入りするのが、素人には経済合理性があるようにも見えてしまう。(実際は和解を無視して訴訟に向かうのが経済合理的だと推測していますが、これは別の機会に記載します)

これが今回の訴訟の最大の問題点だと思います。損害賠償金の請求額をいくら高くしようとも、裁判所が妥当な金額を判定するのでしょうが、和解金については、こういった歯止めがなく、5万円が妥当かどうかわからなくても、訴訟が怖い素人は和解をせざるを得なくなる。これがなければ、私もこのブログを書く事はなかったと思います。 

  • 3.カンパを募っていること

 両弁護士は当訴訟のためにカンパを募り、既に北弁護士の元には7百万円弱集まっているそうです。

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このカンパの趣旨については両弁護士から説明がありません。個人的な損害の賠償のための訴訟なら、カンパを募る理由はなく、かかる経費はカンパではなく、賠償金の中で回収すべきだと思います。もしネトウヨを征伐するという正義のための訴訟ならば、カンパを集める意義はありますが、そうであればそうだと説明すべきだし、両弁護士は勝手に名前を使われて懲戒請求を出された人たちの存在を認めながら、個別対応はしないとツイッターで言い切っています。

個人の損賠賠償のための訴訟ならこの対応はありですが、正義のための訴訟ならおかしいと思います。素人目には両弁護士はいいとこどりをしているように見えます。しかし、カンパ自体は、出す人はネトウヨ成敗のために喜んで出しているのでしょうし、前二つと比べれば重要な問題ではありません。

 懲戒請求を煽ったのに、自分は懲戒請求をしなかった余命には何の民事賠償請求もせず、乗せられたネトウヨだけを訴える理由もわかりません。刑事責任を追及するとのことですが、民事は何もしないのでしょうか。素人目には変なバランスに見えます。

このように殆ど違法性や損害が明らかにされないまま、自分たちが気に入らない懲戒請求に対しては、訴訟をちらつかせ、一方で弁護士費用より少額の和解金を提示すれば、法律を知らない一般市民は最低60万はかかるであろう高額な弁護士費用に尻込みし、和解に応じざるを得なくなります。

では弁護士は違法な懲戒請求に泣き寝入りすればいいのか。

そうではありません。訴訟自体はよいと思います。今回は共同不法行為として訴訟をし、過去の判例を踏まえた妥当な賠償金額で訴訟を提起すべきだったのではないでしょうか。

和解をするなら、まず裁判所に判断を仰ぎ、違法性や具体的な損害などの争点を明らかにした上で、和解金を提示すべきだったのではないでしょうか。和解は余りにも時期尚早だったと思います。

たとえ相手が昆虫の脳みそレベルのネトウヨだとしても、反撃の方法が余りにもアンフェアだったように思います。