キングコング西野のプレゼンスキルの高さに感動した

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話題になっているキングコング西野氏のスピーチについて、なんとなく見てみたところ、人に自分の考えを効果的に伝えるためのノウハウが、詰め込まれていて、率直に感動しました。

キンコン西野 伝説のスピーチ「人生に失敗など存在しない」平成30年度近畿大学卒業式 - YouTube

プレゼンの技術がすごく、1人の人間がここまでの練度で物事をなすために、どれだけの訓練を積んだのだろうと思うと気が遠くなりました。

しかしネットで思いのほか評判が悪い模様。

深爪@新刊「深爪な"誰にも話せない"お悩み相談」発売中 on Twitter: "「いつか絶対に報われる日が来る」なんてのは無責任な言葉でしかなく、なんの励ましにもならないし、そもそも「針が重なったからってなんだよ」と思っちゃったので、もうぜんぜん頭に入ってこない。"

弁護士大西洋一 on Twitter: "新社会人には、こういうふわっとした例え話(よく分からないが故に後で何とでも解釈できるやつ)をしてきて上から目線で俺のところまでこいと言う人に気をつけろという話をしたい。マルチ・宗教・自己啓発・投資勧誘などで本当に多いんだわ。こういうの。 https://t.co/J1XBqoQ0fG"

僕は西野氏について何の予備知識もなく、何となく嫌われているのは知ってましたが、動いているところは初めて見たぐらいです。このプレゼンの何がすごいのか解説していきたいと思います。

客を自分の会話に参加させるには

プレゼンで難しいのは、スピーカーとリスナーの距離感です。スピーカーが自分の話に一生懸命になっても、リスナーがその話に全く参加しておらず、独りよがりになってしまう事はよくある事です。どうやってリスナーの関心を自分の話に引きつけるか。

ここで彼がとったのは、入場をやり直す事で、リスナーに声を出させ、席を立たせる事でした。

私は会社でよく研修講師をやるのですが、リスナーに参加してもらうために、最初に立って、もらい、立ったままのテーブルディスカッションで、声を出してもらっています。座ったまま話を聞いているとどうしてもだれてくるので、一旦立って声を出してもらう事で、まず自分たちもプレイヤーであると認識させるのです。これはリスナーの注意を引きつける意味で、非常にいい方法です。これによって一体感を生んで、自分の話に入ってきてもらう。

何度もはできないでしょうが、非常に巧みな手だと思いました。

入場やり直しの際には、余りにもスムーズにVTRが流れた事から、あれは元々打ち合わせ済みだったのでしょう。全てが緻密に準備されています。

冒頭のディズニーを倒す映画の話は、単にビッグマウスなのですが、後の話につながる伏線になっているという点でも、巧みな構成だと思います。人間は冒頭の話が一番印象に残りますからね。

 

プレゼンで自分を好きになってもらうには

プレゼンを聞いてもらうには、リスナーからこの人は面白そうだ、話を聞いてみたい人だと思わせる必要があります。

彼は相方や同期の面白いエピソードを話す事でお笑い芸人らしく、観客の心を開くことを試みました。やはり人に自分の話を受け入れてもらえるラポールを築くには、笑いが最も有効である事は言うまでもありません。

でも、彼は元々根っからの嫌われ者。ただ、その後の話に繋げていくためには、学生たちに、この人そこまで悪い人じゃないのではと錯覚してもらわなきゃいけない。

まずは自分は嫌われ者であるという自虐をしながら、相方や同期の悪口を言うと言いながらも、彼らとの仲の良さが、随所にさりげなくアピールされています。そして、彼らのエピソードからネガティブな過去であっても過去を変える事ができるという構成に繋がっていきます。一見無駄話のようで、少なくとも3つ以上の狙いを持って緻密に構成された話だと思います。

笑いを取りながらも「この人口は悪いしイキってるけど、そこまで悪い人ではないのでは?」と一瞬でも思わせたら勝ちだったのでしょう。きっちり笑いを取って後半の本題に入っていきます

当たり前の事を角度を変えて何度も言うことの大事さ

後半のスピーチは実はツッコミどころが満載です。理論上は失敗というものはないという主張は彼の持論なのでしょう。でも、その失敗で死んでしまったらどうなるのでしょう?

過去を変える事ができるという主張はわかりますが、未来は変えられないという主張は、よくわかりません。ただ一般に言われている事と逆にする事で印象には残ります。

時計の話も12時になることや、長針と短針が重なる事を勝ちと定義していますが、これは何の説明もなく、よくわかりません。11時台で長針が短針に追いつかないからと言って、何故それが人間の苦難を示すことになるのでしょうか。

しかし、そんな事はどうでもいいのです。

彼が伝えたかったのは、冒頭から繰り返している「明けない夜はないから、負けてもいいから挑戦を続けろ」ということなのです。

それは非常にありふれたメッセージですから、これをそのまま言っても何も伝わらない。そして、一回のプレゼンで、沢山のメッセージを込めても消化不良になります。そこで、彼は伝えたいメッセージを一つに絞り、言い方を変えてそれらを繰り返しました。時計の話だってよくわからないけど、11時台だけは長針は短針に追いつかないんだという普段注目していなかった些細な気づきを、メッセージに無理やり組み合わせる事で、メッセージが頭に残りやすい仕掛けになっています。

終わった後に何が言いたかったのかよくわからないプレゼンが一番ダメなプレゼンですが、今回のプレゼンは誰が見ても、最初から最後までまで「挑戦する事が大事」というメッセージで貫かれていて明瞭です。そのメッセージを頭に残すためにいろんな仕掛けがなされ、このメッセージが繰り返されている。

これがよいプレゼンの見本だと思います。話の中身はありふれていて凡庸ですが、それを効果的に伝えて、相手の印象に残す為の技術が卓抜しています。

これが冒頭に彼が言ったコミュニケーションで、このプレゼンはそのお手本として今後も残っていくと思います。