池袋の暴走事故現場で被害者の遺族とお会いした話

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池袋暴走事故の被害者の遺族が、新たに会見をされた。前に事故現場に行って献花台に祈りを捧げた話はこのブログに書いたが、その時には書けなかった話がある。被害者の旦那様が、事故現場に行かれた事を自ら明かしたのであれば、もうこの話は書いてもいいだろうと思う。

GWのこと

当日は、ちょうど東池袋トイザらスに用事があって、出かけた。6歳の息子、3歳の娘の入学祝いにおもちゃを買ってあげるためだ。用事が済んだ後に、妻が池袋の事故の献花台に行こうと言った。彼女は既に献花台に訪問して、祈りを捧げていたらしい。家も近く、同い年の娘もいたので他人事と思えないと。

僕だってそうだ。特に突然最愛の妻と娘を失った旦那様の気持ちを一瞬でも想像すると、リアルに具合が悪くなり、吐き気がするほどつらかった。自分が同じ立場ならきっと耐えられないと思うからだ。行かなければならないだろうと思いながら、行きたくなかった。でも、妻が言うから、重い足取りで献花台に行き、並んでいる花や飲み物を見たら、本当に二人が、ボケ老人に殺されてしまった事が実感され、顔を両手で覆って大声で泣いてしまった。隣で妻が「マジで…」と呟く声が聞こえてきた。

旦那様や亡くなられた奥様の無念を思うと、感情が抑えきれなかった。一緒にいた娘が怯えてしまったので、そこから立ち去ることにした。

そして、現場から駅に向かっていると、妻がなかなか着いてこない。振り返ると、ニット帽をしてマスクをした男性と話し込んでいる。なんだろうと思った。妻が僕を手を振って呼び寄せた。まさかまさかと心臓が動悸を始めた。駆け寄ってみると、妻が泣きながらこちらを見て「事故で亡くなった子のお父さん…」とだけ言ってまた泣いた。

何を言えばいいのか

妻が言うには、私たちの後ろを旦那様が付いてこられて、ニット帽にマスクをしていたが、妻は記者会見を見ていたので、すぐに気が付いて、お父さんですよね?と聞いたら、はい、と言ってあちらから、話しかけてこられたらしい。

目を初めて合わせたが、頰がげっそりとこけ、端的に言って目に全く光がなく、死んでいた。今までの人生でこんな目をした人を見た事がなかった。何も言えなかった。

彼はボソボソと語り始めた。

「今日初めて献花台に来たが、旦那さん(僕)が見ず知らずの妻と娘のためにあんなに泣いてくださってるのを見て、お礼を言いたくなって付いてきてしまいました」

「たくさんの人が来てくださっていると聞いていたので、早く来たかったんですが、なかなか来れなくて、今日やっと来れました。
皆さんにお礼を言わなきゃいけないんですが、それはできないから、せめてと思い後を付いてきた」と仰った。

僕の目をまっすぐ見て「見ず知らずの妻と娘のために、こんなに心を寄せていただいてありがとうございました」と言って、ぺこりと頭を下げた。

この人は何を考えているんだと思った。

自分が死んだ方がマシなぐらいの生き地獄にいるのに、なんで通りすがりの他人への感謝なんてまだ残ってるんだよ、なんでフラフラの足で追いかけて来るんだよと思い、みっともなく泣くことしかできなかった。

いくら僕が心を寄せたところで、自分の家族は健在で、彼の気持ちなんてわかるはずもない。何も言えなかった。頑張ってくださいと言おうと思ったが、生きてるだけで既に想像を絶する努力だし、握手もできない。

妻が、「私は加害者を許せません」と言いかけたが、静止した。彼は自分の感情や恨み言は何も言わなかったから。わざわざ追いかけてきてくれたことに感謝を伝えて、その場を去った。

その後

家族と別れて、その辺りをウロウロしていた。

また旦那様が歩いているのを見かけた。きっと一人でいるのは辛いだろうから、お茶でもしませんかと言おうと思い、後ろを追いかけたが、僕は彼の友達でも何でもなく、声をかけられても困るだろうと思い、すぐそこにある背中を見送ることしかできなかった。

その日も次の日も彼の事が頭から離れなかった。女の子連れのお父さんを見たりすると、彼も事故さえなければ、幸せなGWを過ごせたのにと思ったりした。もし自分が彼の同じ立場になったらと思うと恐怖を感じた。

でも、結局は、自分にとって大切な人間を失わず、五体満足のまま一日を終えられる事を毎日感謝して、日々を積み上げていくしかないと考えるようになった。今日、家族も自分も五体満足で過ごせたのは、当たり前の事ではなく、単なる奇跡であって、明日は誰かが死ぬかもしれないが、今日、皆が生き延びれたことを感謝しようと思った。

今日久しぶりに記者会見で話す彼を見た。生き地獄にいるようで、毎日朝起きると二人を失った事を思い知らさられると言っていた。

彼は現場に来たことをマスコミに知られたくないと言っていたので、今までこの話は黙っていた。しかし、今日の記者会見で現場には既に4回行った事を本人が明らかにした。

被害者遺族の人柄や苦しみが少しでも伝わればいいと思って、このエントリーを書いた。皆様がこの事故について、何かを考えるきっかけを提供できたとしたら、大変幸いに思います。。

 

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