The Beatles 「ノルウェーの森」は誤訳?

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僕は昔から、ビートルズが大好きで、中学生の時から、何百回と彼らの12枚のアルバムを聴いているものの、悲しいかな英語が聞き取れないので、歌詞の意味はよくわかっていないことが多い。Rubber soulというアルバムに入っている「Norwegian Wood」もその一つだ。

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ジョンの渋い声と、ジョージハリソンが当時傾倒し始めたインド音楽の影響で導入されたシタールの音がうまくあっていて、ビートルズの中でも特に好きな曲だが、このノルウェーの森が何を指すのかよくわからなかった。

僕の手元にあるビートルズ全詩集(ソニーミュージック)の訳だとこんな感じだ。記憶ベースだが、国内版についていた歌詞もこんな感じだったと思う

I once had a girl, あるとき、女を引っかけた
or should I say she once had me? それとも、こっちが引っかけられたのか
She showed me her room, 彼女は僕を部屋に通してくれた
isn't it good, Norwegian wood? いいじゃないか、ノルウェーの森
She asked me to stay and she told me to sit anywhere, 泊まっていってと彼女は言い、好きなところに座るように僕を促した
So I looked around and I noticed there wasn't a chair. そこで、僕は部屋を見回し、椅子が一つもないのに気づいた
I sat on a rug, だから敷物に腰を下ろした


biding my time, drinking her wine. ワインを飲みながら時間をつぶすうち
We talked until two すっかり話しこんで、夜の2時になった
and then she said "It's time for bed". すると彼女 ”もう寝なくちゃ”
She told me she worked in the morning and started to laugh. ”明日は朝から仕事なのよ” 彼女はおかしそうに笑った
I told her I didn't and crawled off to sleep in the bath. ”こっちは暇だ”と僕は言ってみても始まらず、僕は仕方なくバスタブで寝ることにしたんだ


And when I awoke I was alone, 翌朝、目を覚ますと僕は一人
this bird had flown. 小鳥は飛んで行ってしまっていた
So I lit a fire, 僕は暖炉に火を入れだ
isn't it good, Norwegian wood? いいじゃないか?ノルウェーの森

誰にでも経験のあるようなうまくいかなかった苦い思い出の話だが、ノルウェーの森が何を指すのかがよくわからない。なんで突然森が出てくるのか。ノルウェーの森の何がいいのだろうか?

この頃からジョンはドラッグにハマっていくようになり、何らかの隠語であり、特に深い意味はないのだろうと思っていた。good とwoodで韻を踏みたいだけの話なのかなとも思っていた。

でも、最近になって、このノルウェーの森が、実はノルウェー産の家具を指しており、isn't it goodと最初に言うのは、男性ではなく女性の方で、最後に火をつけるのは暖炉やタバコではないという解釈があると知った。改めて修正した翻訳を貼ってみよう。

I once had a girl, あるとき、女を引っかけた
or should I say she once had me? それとも、こっちが引っかけられたのか
She showed me her room, 彼女は僕を部屋に通してくれた
isn't it good, Norwegian wood? 素敵でしょ、ノルウェー産の家具なの。
She asked me to stay and she told me to sit anywhere, 泊まっていってと彼女は言い、好きなところに座るように僕を促した
(上記と同一のため中略)

And when I awoke I was alone, 翌朝、目を覚ますと僕は一人
this bird had flown. 小鳥は飛んで行ってしまっていた
So I lit a fire, だから、僕は家具に火をつけたんだ
isn't it good, Norwegian wood? よく燃えるじゃないか?ノルウェー産の家具は。

 

赤字の箇所が翻訳を変更した箇所である。これだけで、男が行きずりの女の部屋に招き入れられたものの、結局やり損ねて、お風呂で寝る羽目になってしまったので、腹いせに彼女が自慢していたノルウェー産の家具に火をつけて、その燃えっぷりを見ながら、彼女が言ったように「isn't it good?」とつぶやくというストーリーがはっきり見えてくる。もちろんタバコや暖炉に火をつけたという解釈もあるが、それであ」ば、なぜ最後に「isn't it good?Norwegian wood」と言ったのか意味が繋がらない。

この解釈を知った今となっては、Norwegian woodをノルウェーの森であると訳した最初の和訳は誤訳にしか見えないように思えてくる。国内版では今でもノルウェーの森として記載されている。なぜプロがこのような誤訳をしたのだろう。

しかし、これはおそらく誤訳ではなく、ノルウェー産の家具だと訳してしまうと、やれなかった腹いせに女の家に火をつけるようなサイコパスの話であると一目瞭然にわかってしまうので、当時、訳をつけた人が苦肉の策で、苦し紛れにノルウェーの森という詩的な単語を当てて、本当のストーリーから目をそらさせたのではないかと思っている。

当時はストーンズの「Let's spend the night together」という曲が、タイトルだけでセックスを連想させて過激だとラジオで流してもらえないような時代であり、実はこんなアレな歌詞であるとバレてしまったら、ラジオで流してもらえなくなると思ったのかもしれない。当時のマーケットでラジオに流してもらえないのは、プロモーション的に致命傷になり得る(映画ボヘミアンラプソディーにも、曲が長すぎてラジオでかけてもらえない事を心配するレコード会社の社長が出てきたと思う)。

しかし、そういった苦心の訳が、有名な小説のタイトルになり、映画化までされたのは面白いなぁと思う。当時苦労したであろうレコード会社(東芝EMI)の担当者も報われた思いがしたんじゃなかろうか。